おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
アドバイスまで、田舎もののわたしはことあるごとにお世話になっている。今日も合流したら荷ほどきを手伝ってくれ、そのあとでどこか面白い場所へと連れていってくれるらしい。
美加、そう、美加。はつらつとした以外にたいした印象を抱かなかったその顔が、その名を知った瞬間に忘れられないものとして頭に刻まれたのを思い出す。美加にやさしくする。あのノート、佐伯さんの記述と関係ないのだとわかってはいる。だが、気がついたら声をかけていた。このように影響を受けてしまっているのだからしかたがない。まだ佐伯さんの不在から完全に立ち直ったわけではない。それは認めよう。
しかし、卒業式では満開に咲いていた桜の花びらを二枚
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)