おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
めんどうになりそう。たとえばおくすりのことは完全に犯罪だし、やっていないって証明するにはかなり手間がかかるだろう、キスのことだってああいった緊急時に必ずだれでもやるのかと言われればそうでもなくて、すると性癖とか過去の経験までも詳らかにしなければならない。そうまでする事態だとぼくには思えない。とうてい。
「ぼくは悪くないんだ」
「しっかりしてよ!」
すごい剣幕だ。もしかして浮気したとでも思っているのだろうか。川上と? 荒木と? ありえない……。どっと疲れが湧いてきて、床に座り込んでしまう。どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんだろう。彼女に怒られるようなことは絶対にしていない。そこだけは安
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