おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
 
るっていた朝倉さんが口を閉ざし、タオルケットにくるまる。それでも見つめていると、
「出なよ」
 と言う。
「うん」
 パンツとシャツ、ジャージを身につけてわたしは受話器を取る。

「はい」
「ぼくです」
「ああ」
 もう真夜中だというのにいつもどおり迎えてくれる宮下さんに感謝しながら部屋に入ると、すぐ右にあるベッド近くの床にブランデーの瓶とコップ、灰皿には火の付いたままのハイライトが置かれている。
「ちゃんと消さないと危ないじゃないか」
「あ、ちょっと、ん?」
 アルコールのにおいがただよってくる。ぼくもけっこう飲んできた自覚はあるけれどこれは彼女もかなりやっていたようだな
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