おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
も、ほんとうに薄い粘着質の膜で繋がっていてあるいはそれが邪魔になってひとつになることは絶対になくて、どこにでもいるどこだかにいるらしいかけがえないのない他人どうしだった。
いま机にはこれを書いているパソコンのほか、コーヒーの空き缶がある。その手前に使用済みの生理用品を入れた茶碗がある。ほこりをかぶったアイポッド、血にまみれてところどころページが張り付いて開かないノート、一〇〇円ライターが三つ、ピースライトが二本、あなたの部屋の鍵、燃え尽きたマッチがある。正面の壁にはあなたを画いたのスケッチがセロテープで貼られている。口だけは空白。微笑みのかたちにくり抜いたのだ。大丈夫、あなたはこういう顔をしてい
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