おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
 
ありさまを事細かに吹聴していたらしく、インラン女とかなんとか陰口をたたかれていた。知らない人間からいきなり値段を切り出されることもあった 。
「腰のグラインドの売女リティ半端ねえわ……みんなもやってみなよ!」
 それを知ったわたしは周囲の視線に納得がいくとともに、心の痛みとは胸だけでなく肌や自分のにおいが入ってくる鼻にも訪れるのだ、と知ったけれども例の妖精と戯れたり自傷行為をくりかえしたりするうちに自閉症的な麻痺感覚を会得した。なにも思わないしなにも感じない、笑うこと泣くことは典型的な媚態、欲情の記号であると学んだ 。だからあなたに出会ったときすぐにわかったのだ。校庭のかたすみで画いていたスケ
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