おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
 
らつきの種でしかなくなる。気にするなといわれても通過のたびに講義が中断するわけで、ジェットの巨大な影が校舎全体を覆うので視覚的にもいらつきを助長するのだった。そのような事態に対しわたしは下手に集中を維持しようとするのではなく、意識をやらなければならない義務からいわば散らす 。塗装のはがれてコンクリートがむき出しになった壁やそのひび割れ、あるいは斜め前の席の足を汚すゴミやほこりへと焦点をぼやけさせつつ目をやる。そこにはたぶん妖精がいるのだと思ってみる。あるとき妖精がいるのではなくそれらそのものが妖精なのだと発見したりもする。
 高校一年生のとき、当時つきあっていた先輩がクラスメイトにセックスのあり
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