おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
な町にいるけれど、そういったものはもうなにかよくわからない諸々に飲まれていまこいつを殴っていて、でもまだすごくあたたかく残っているからたぶん殺してしまうことはない。
午前一時半、佐伯さんから≪今から行っていいかな≫とメールがとどく。≪いいよー≫との返事を受けて、彼はジャケットを着る。割とお値打ちな古着で、大切にしているものなのだった。
わたしたちの高校は極楽町と街に挟まれた隣町、市の南側を占める山の斜面に建てられている。どの階にいても窓から木々が見え風のたび起こるざわめきは心を落ち着かせるかといえば嘘で、十数分おきに校舎の上空を飛んでいくジャンボジェットの轟音とあいまってしまえばいらつ
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