おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
 
に鉄槌を落とす。大好きな極楽町のことを思い浮かべている。たぶんわたしのことも少しは念頭に置いている。こいつはむかしからぼくを欲しかったと言う、それならぼくも……ちがう、ぼくたちはお互いをめちゃくちゃにしたかったんだ、五人全員が、犯して、犯して犯して……ただ、なにかに防壁のようなもの守られていた、若さといってもいいかもしれないし、むかしといってもいいかもしれない、それはそれとして過去として扱っているべきだったもの、それを現在に持ち込もうとすると、なにかなくなる、たがみたいなものが外れる、ここまで過激な結果に落ち着く必然性はないにしても……でもこれでじゅうぶんじゃないのか、ぼくは好きな人がいて好きな町
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