おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
 
で乾杯した彼らは時間の経過とともに、学ランとセーラーだった頃には考えもつかなかった色気としなだれをこれも意識しないまま作っているのであった。お互いの顔を見交わさず、視線はテーブルの中央、はじめに生ビールといっしょに注文したシーザーサラダがあった地点に集まることが多い。
「やっぱりそう、やっぱりそう、やっぱりそうなんだね!」
 と佐伯さんは叫ぶ。同意する者はいなかった。群を抜くペースで酒を飲み、揚げものばかり頼むので割と辟易されているのだ。代わりに川上が、
「ル・パーン」
 と言い、深沢と荒木が笑う。おかしなやつらだ。洒落乙な藤枝が覚醒剤パーティーのうわさを始めた。おとといの夕食を思い出そう
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