おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
すでに待っていた。背が高く美形のナルシスト深沢と、もう少し背が高ければ自分は峰不二子に似ていたと豪語する川上である。お久しぶり、やあほんとうだね、などと言いながら三人は電車に乗り込む。
深沢は口蹄疫の話をした。
川上は親孝行の話をした。
佐伯さんは極楽町の話をした。
「駅にハトがたくさんいるのを見るたびに懐かしさを感じるよ」
「そう」「ふうん」
「でもそれはどこにでもあることなんだ」
市街はどの交差点も片側四車線あるが、車の間断ない割にごたついている印象もない。走り抜けていく様にどこか整然としたところがありこれも東京とは違う、と考えるうち更に合流する藤枝は七分袖に露出した腕毛
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