おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
いっしょに入ろうか』とか言って。そして気持ちよくセックスだ。なにがセックスだよ!」
「宮下さん、落ち着いて」
固有名を使うことによってこの場での世間体を考慮させたかっただろう彼の狙いはまったくの的外れと言わざるを得ない。だいたいわたしはきちんとふつうに怒っている。
「いい? だから佐伯さんはこの話し合い、そもそも合意形成を前提として設定している。いいの、わたしにはすべて理解できている。勘違いかもしれない。けれどわたしが現にそう思っていることが重要じゃないの? この豪勢な料理もシャンデリアも、ていねいな接客もそのお膳立てとして見えている。なにこれ、あなた、わたしの思いを何千円かのいわゆるオゴ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)