おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
品な雰囲気の粒子がこちらへ流れ始めたような気がして、少なくともわたしはそれを意識してさらに頭に血がのぼる。仕事からここへと直行した彼はスーツを着ていた。そうスケジュール、わたしはアパートの彼の部屋へと合い鍵で入り、あらかじめ荷物を置いて来たのだ。
「それでこの状況、めずらしく高そうなお店に連れてこられたと思ったら、こんな大事な話を佐伯さんは持ち出して、しかもスーツで」
「ちょっと意味不明じゃないかな」
「バカじゃないの。あなたはこれから家に帰る。オンの象徴たるスーツを脱いでオフになる。つまりくつろぐ、ということでしょう? 『きのうが天皇誕生日とはいえ疲れたな。ああメリークリスマス。お風呂いっ
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