血まみれの夜/岡部淳太郎
だった
私は夜と同じようにここにあった
ただあるだけで 細い
息を繰り返すだけで
何もしていなかった
どうやら私は少しずつ何かから
退きつつあるようだった
夜が物体(ぶったい)として物体(もののけ)としてあるように、
私もあることになるのか
夜は点滅するように
まばたきをするように
その暗さを増減させていった
私の気がくるっと
回転してしまう前に
眠りの中に逃げこむべきであるように思えてきた
私は夜を寝床に引き入れることはせずに
夜をテーブルの上に残したまま
ひとり眠りについた
人は夜から逃れるために眠るのだ
夜と一緒に眠ることなどできはし
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