血まみれの夜/岡部淳太郎
はしない
私は夢の中で私自身から剥がれ落ちて
血まみれで横たわっていた
私が物体(もののけ)として落ちている世の中。
そんな世相だからこそ 逆説的に
私は夢を見ることができるようだった
やがて外の世界と内の世界の
ふたつの暗さの中で
私は抗いようもなく
私自身と重なり合っていった
やがて窓の外が明るさで覆われ
明日の号令に目を醒ました時
私の身体は見知らぬかさぶただらけとなる
放置した夜は
私の中に取りこまれて
いつしか消えているのだ
(二〇一二年四月)
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