血まみれの夜/岡部淳太郎
 
たものの
私は気まぐれに拾った夜をどうするのか
まだ何も決めてはいなかった

私はとりあえず夜を
テーブルの上に置いてみた
いつもひとり食事を摂り
ひとり思索のための書き物をする
いまは何もないテーブルの上に
私は夜を置いて眺めた
夜はまだ血まみれで
細い息を繰り返していたが
私はその血を拭うことさえしなかった
夜の治療方法など どの本にも
どこのネットワーク上のページにも
書いてあるはずがなかった
だから ただそうして放置している以外なかった
夜はそんな私を怨むこともなく
ただそこにありつづけているだけだった

ふと私は我に返り
夜をこのまま自分ひとりの
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