「バイクと少年」/ベンジャミン
放置されていた盗難車だった。
そうなんだ、僕はこいつらを動かしたかったんだ。動くためのエンジンも走るためのタイヤもついているのに、こいつらは自分の力だけじゃ起き上がることもできない。誰かに盗まれて、誰かに捨てられて、あとは誰にも気づかれずに腐り果ててゆく。そんな運命なんて可愛そうじゃないか。
(まるで線上を歩く自分のようさ・・・)
2スト・2発・250cc・RGV 通称ウルフと呼ばれるそいつは、まだ生まれたての赤ん坊のように、息ができるのか不安なくらいの姿で横たわっていた。キレイな濃紺のメタリック、流線型のボディー、僕は学校から帰ると毎日会いに行った。毎日、毎日・・・
そしてついに
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