(仮題/メモ/断片)夏にくる記憶、羅列、季節のろれつ、、/風呂奴
たら
2匹のトンボが石になっていた
耳元で虫かごを揺らしたら
スナック菓子のように 軽快に踊っていた
あれから十数年 学生服から開放された2年後の冬
祖母は仏壇の向こうへ行った
納棺の前に 体を拭いたり化粧をしたりする中で
あの夜 祖母は
目の前の花のように静かだった
名前の代わりに 「おばあちゃん、」と心のどこかで呟いた
名前を知らないそれを 「花、」と書き留めた今しがたのように
石みたいに硬直していた肉体は 石よりもずっと冷たかった
氷みたいに溶けそうな体温とその比喩は 翌日火葬場の火で透明に蒸発した
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先日 帰省した兄とともにお墓参りへ行った
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