五十日後の世界/竜門勇気
 

夜勤明けで頭ぐらり
見つけるものは
父母揃いて犬抱く姿
ただいまと声をかけると
二、三度喘いで息絶えた

ただいまと我が声はあぶくになって
さよならと我が犬は小さな吐息を吐いて死ぬ

今朝には雨は止んでいた
車に霜が降りていた
なんて日だ なんて
なんて淋しい日なんだ

夜勤明けで母と語らう
彼女はお前を待っていた
待ってその身はながらえた
みんな置いて行ってしまった
兄犬を追って行ってしまった
妹から電話がかかってきた
みんな置いて行ってしまったという
兄犬を追って行ってしまったという
俺は黙って、喋った
本当のことはわからないけれど
今度は手
[次のページ]
戻る   Point(2)