五十日後の世界/竜門勇気
 
は手を取って送ってやれたよと言った
妹は黙って、喋った
私はどちらも送ってやれなかったという
みんな居なくなってしまったといって泣いた

五時も過ぎると
空は明るくなっていた
先々月行ってしまった兄犬を送った時は
まだまだ暗い闇の中にいたのに

昨日が、四十九日だったね
今日はあの日より
五十日後の世界
あの日五十日の後に
お前がいないとは思わなかった

ただいまと我が声はあぶくになり
さよならと我が犬は小さな吐息を吐いて死ぬ

ひびの入った小さな石が
血管を転がり遊んでいるようだ
この五十日後の世界を
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