やすらかなこと/はるな
 
いた。ばりばりして硬そうな制服で、みんなそれなりに賢そうだった。そういえば新学期だったな、四月から、熱心だな(そういえばそのデパートの近くには大きな予備校がある)、と思ったのをおぼえている。
質量保存の法則。でも、ある種の不安は、何もないところからきゅうにやって来て、そして物質的な暴力さで、踏み荒らしていくのに。制服を着ていたころ、そんなふうに考えていた。じゃあこれは誰かの不安なのだろうか。不安はなくならず、世界をひとまわりして、またやってくるものなのだろうか。と、考えるととたんに悲しくなり、もちろん物理の成績はひどいものだった。

あんなあかるいデパートのトイレで、大人の顔をしながら、制服
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