やすらかなこと/はるな
 
制服に微笑むなんて、なんて遠くまで来ちゃったんだろう。何もかも体験しきったような顔して。
そういえば春だってべつに好きじゃなかった。置き去りにされるような気持ちで。新学期は憂鬱だった。きまって新しい靴下を用意されていた初登校の日。それはひねくれて引っ込み思案のわたしへの母からの励ましだったのだろうけど、そのときはそんなふうに思えなかった。なにもかも、わたしのことなんて知らない顔をして。よそよそしい季節。

でもそんなこと、すぐに忘れたのだ。お買い物をして帰り、夕食をつくって、あたらしい洋服を夫に見せびらかして、夫はあたらしいCDを買ったからと、ドライブに連れ出してくれた。シャワーのあとで、わ
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