こわれた護岸をなおしています/木屋 亞万
きの口癖なのだ。彼にとって絵を描くことが「こわれた」を「なおす」ことであることは間違いなさそうだが、彼の言う「護岸」がいったい何なのかということは結局伝わってこないままだ。
しばらく彼の言葉を反芻しているうちに、彼のいう護岸は「輪郭」なのではないかという解釈が頭に浮かんだ。彼は輪郭だけが絵ではないと言った。それは彼の絵画論ではなく、絵の描線に関する、彼なりの悩みの告白だったのかもしれない。
こわれている彼の絵の輪郭。私を表すための、そして私を納めておくための、器が壊れているのだ。だから彼の線は歪みながらも、輪郭を追い求める。「こわれた護岸をなおしています」という言葉通り、一つひとつ石を積む
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