こわれた護岸をなおしています/木屋 亞万
 
目の周りがくぼむように弛んでおり、その窪みによる影と皮膚の黒ずみによって、ひどく暗い色をしていた。目の周りだけが死んでいるようで、顔の中で目が一番遠い部位に思えるほどだった。
 彼は狂気を内に秘めながらも、疲弊のためにそれが出せないでいるのかもしれない。銀色のチューブから絵の具をひねり出す彼の手が、創造性を使い尽くした心から、なおもその残滓をかき集める彼の描画を思わせた。
 「輪郭が絵を築き上げる。それは認めよう。だが外側の皮膚だけが、私を表すのではないように、線は絵の外側でしかない。そうだろ。いや、そうなんだ。それは間違いないんだ」と彼は言った。一度もこちらに視線を移すことなく、作業に没頭し
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