イチゴ狩り/ただのみきや
狩りに参加した息子の顔は
曇っている
子イチゴたちの悲しみに優しい魂は敏感に反応してしまうのだ
イチゴ狩りにおいてもっとも不名誉なことは
追いつめたイチゴに反撃されることだ
特にへた側半分くらいがまだ白いイチゴは要注意だ
若いやつらは気が荒く突然向かってくることもある
そんな時うっかり足を滑らせて転んでしまうと
まだ熟していない固い部分 あの粒々あたまで
顔など露出している部分を激しく擦られてしまう
それほど実害はないのだが「白イチゴに撫でられたやつ」
という不名誉な称号が 数年はついて回るのだ
再び 銃声
狩りは終わった
全員が体中に返り汁を浴びて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)