イチゴ狩り/ただのみきや
びて赤く染まっていた
表彰式
多くイチゴを狩った者 上位三人が表彰される
それぞれが仕留めたイチゴのへたを重ねて作った
王冠を被り 満足げに微笑んでいる
誰も拍手を惜しむ者はいない
彼らはわたしたちの誇りなのだ
帰りの車の中 息子は口を開かなかった
「かわいそうな子イチゴを家に連れて帰りたい」
その願いをわたしが聞き入れなかったからだ
イチゴは「かわいそう」だけで飼うことはできない
やがてイチゴは甘い香りを漂わせ
人の食欲の対象になる
熟したイチゴの誘惑に 人は勝つことはできない
その時の魂の苦悩
それは筆舌しがたく 長く人生に影を落としてしまう
そんな思いを息子にまで負わせることは
わたしにはできなかった
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