イチゴ狩り/ただのみきや
 
明など
もはや誰も聞いていない
皆が神経を集中し 始めの合図を待っている

   銃声が鳴り響いた!

いっせいに駆け出す狩人たち 
先頭の何人かが長い得物で追い立てると
イチゴたちは慌てふためきながら逃げ出して行く
すかさず 狙いを定めボウガンが放たれる
次々と仕留められて行くイチゴたち
自らの赤い果汁溜りの上に横たわる
得も言われぬ濃厚な 甘い香りが支配し始めると
あたりは異様な興奮で包まれるのだ

倒れた母イチゴに 戸惑いながらも寄添う
まだ幼い子イチゴたち
震えている
狩人の掟として母イチゴとその子イチゴを
一度に食してはいけない
初めてイチゴ狩り
[次のページ]
戻る   Point(9)