プシュウ/佐々宝砂
まぬるい日が射す教室で
淡く紅さした唇を突き出し
ぷしゅうどもなす・ですもりちか
と
彼女が呪文を唱えたとき
私たちはまだ三人ではなく
すてきでしょう
呪文を唱えて
男のひとは
山羊の脚したパンになるの
女のひとは
たぶん見えない妖精になるの
そうして不思議な植物園で
追っかけっこするのよ
もちろん笑いながら
楽しくね
永遠にね
永遠の追っかけっこはごめんだと
思ったものだったが
パンになるのは悪くなかった
私の脚は
確かに山羊の臭いを発散したが
パンのようにはあけすけでなく
見えない妖精を追いかけ続ける
甲斐性もなく
やがて私たち
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