プシュウ/佐々宝砂
生活を続けることは意外に容易く
私の生活からは
次第に妻の影が消えてゆく
プシュウ
という
声だけをここに残して
2.投函されなかった手紙
***さま
かなしくて、かなしくて、おたよりします
けれど、かなしい理由が言えません
ええ、わたしにもわからないのです
覚えていらっしゃるでしょうか
夏がくるたびに
三人で海に出かけました
あのひとは泳ぎがうまくなかったけれど
あなたは泳ぎが達者でしたね
わたしが溺れる真似をすると
あなたは即座にやってきた
わたしが笑って
口を尖らせて
プシュウと言うと
あなたも笑いました
そして言
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