波打つ草原/杉菜 晃
 
には
山百合が首をもぎ取られて立っている
花は一つもなく
切断面に蝶が来て
ゆっくり羽根を開閉する
言いようのない芳香が
辺りに漂い
この匂いが
あるかぎり
静かに
蝶の羽根の開閉はつづく


◇雨蛙

雨蛙が身を低くして
濡れている
雨乞いの
祈願かなったね
よかったね


◇草原

草原を
白いパラソルがひとつ
低迷…
そう低迷している
柔草に執心する
糸トンボのように


◇口笛

草原に座して
口笛を吹くと
寄ってくる鳥と
逃げ去る鳥がいる
寄って来た鳥を
よく見ると
瞳の奥に
僕と同じ世界を
共有していた
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