水ぶくれ/リンネ
 
りついている人間のうち、その半分がきいろいものに噛まれて動かなくなりました。高熱ののち、樹脂のように固まってしまう。ですからこれは階段をつくるのや、壁をつくる建材として使われます。例えばこの後藤さんの表札はわたしの父親の一部であるのですが、それはだれにも知らされていない。もちろん後藤さんにも。

脳神経の乱れで寝ている間、父は幻覚を見ずにすみました。水ぶくれのコンニャクのような顔、これは母が死に際の父にかけた科白です。壊れた舵で、父は夢の中を浮遊します。天井に引っかかった父の一部。これは頭部です。あつあつのご飯を口にしながら、わたしは何の感慨もなくそれを見ています。浅蜊の味噌汁からあがる湯気が
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