水ぶくれ/リンネ
気が、そのままいい案配に天井を、父の部分を湿らせて、すでに部屋中を覆っています。私の横で転がり、幼い妹が折り紙を折っています。母はサンマの骨を丁寧に取り除いているところです。わたしは熱気とともに味噌汁をすすりながら、放心したような表情をして。あ、お椀の底、浅蜊が音を立てて放屁した。
父さん、あなたは今、滑り台です。この公営団地の、ごく人通りの薄いこの公園で、子供たちの尻を滑らせます。ときどき念仏のような音がする以外、おおむねおとなしく眠っていますね。あなたは他人と助力し合おうという気持ちが薄い。それでも夜がくれば、遠くから旧友のように滑り込む月たちと、一種の快感をむさぼる。誰かの舌が、ゆっくりなぞるよう、銀色の滑り台をさすりはじめています。それがわたしです。ざらっとした砂を口で絡ませ、空からはいい調子に霧雨が降り。後藤の目がこちらを向いています。大きな、人間よりも大きなジャガイモの気配が、わたしの頭に重たくおぶさってきます。
紙飛行機が飛んでいます。
雨の中、どうして飛んでいられるのか。
どうしてこの世界を生きていられるのか。
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