屠殺場/草野春心
 
を全て脱がせ、女の肩のあたりに
  ポケットから取り出したナイフを差し入れ
  たっぷり時間をかけて
  全身の皮膚を剥ぎ
  肉を削ぎ落とし、バケツの中に
  ぼとぼとと放り込んでいった
  それは勿論、
  彼にとって初めての経験だったが
  彼は汗一つかかずやってのけた
  肉のバケツが三つ
  臓器や性器のバケツが三つ
  それが済むと、鮮やかな赤い肉と
  まばらな体毛が残ったその抜け殻を
  豚の肉と反対の側の壁に掛ける



  それからようやく男は座った
  椅子はようやく男の椅子になった
  ひどく夥しい量の血液と
  衣服の散らばった床に
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