湖/根岸 薫
 
囲にひとが誰もいない時、その鳥が現れるのです。白く、大きい。昨日もそうでした。車や人のある時は、姿を現しません。…ついひと月ほど前からなんです」


乙「成る程。では他にその鳥を見たことがある人はいないのですか」


甲「…はい。なにしろ私が見ているとき、辺りには誰もいませんから」「鷺でもないし…不思議な鳥です」


乙「いえ、そうではなくてですね、その鳥を見たことがあるという人が、誰か他にいませんか?」


甲「…それは…はい、いないと思います」(髪の毛を抜く動作)


乙「そうですか。よくわかりました」


甲「先生、だから私は自分がおかしいのではないかと思
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