憂鬱録より “火”/kaz.
 
が流れている。溶鉱炉の中で燃えるとき。兵舎の冷たい夜
が更けていくとき。そうした印象の中でもとりわけ目立っているのが、戦地を飛び交う弾
丸として兵士の心臓の中に食い込み、血が噴き出すときだ。鉄が、鉄を散らしている。
もし私が錬金術師なら、女から金属を取り出すことを考えたかもしれない。地下から噴き
出したマグマのように、血は情熱、パトスを形容するメタファとして結晶した。それは真
理探究の精神と深く結び付いて、未だに「智」と「血」の発音の中に、その痕跡を残して
いる。

“消さねばならぬ。火を消さなければならぬ、女の内に眠る炎を消さない限り、私は……”
と、いくらかつぶやくのが聴こえ
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