すばる/木屋 亞万
 
と答えた。微笑むように暗闇の中で、羽根を小刻みに振るわせたのがわかった。
「小生って、名前なんだ」と思ってつぶやいたら、名前は「すばる」だと答えた。
「僕と同じ名前だ」と驚いていると、「だから小生とあなたは話ができるのでございますよ」と言って、またブブッと羽音を出した。そういう癖なのかもしれない。
 「今日から啓蟄にございます。虫が動き出すのにとても良い日和です。冬は終わりついに春がやってくるのでございます。小生も巣穴を這い出し、あなたの元へやってきたのでございます」
「君は僕のところへ何しにやってきたんだい」
「生暖かい春一番の夜に、あなたとちょっとお話がしたくなりましてね」
それな
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