蟻殺しのアリエッティー/和田カマリ
まったのです。
「妖精さん、ありがとう、命の恩人だ。」
興奮の醒めやらない彼女は、歯を剥き出して笑いましたが、急に真っ赤な顔になって、前屈みにつんのめって、黒い反吐を吐いたのです。強酸性のそれは、畳を焦がしました。泥酔状態の若いOLが、便器に顔を入れて苦悶しているような、いたいけなポーズだったので御座います。
「大丈夫かな、妖精さん。」
人差し指の腹で、首筋から尾てい骨に架けて擦ってあげると、残りの嘔吐物を、全部吐き出して、少しスッキリしたご様子でした。僕はカブトムシの飼育ケースの中に、リカちゃんベッドをセッティングして、妖精さんに横になってもらいました。ツユクサから
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