石榴/yuko
 
を?」「生まれたか
った、」わたしの、腹には石が詰まって
居て
ずっしりと重い
のです。ぱっくりと開ききって、平面化した
わたしの躰を、通りすぎていく人の群れ。目
の前の世界が泡でいっぱいになっていくので、
(見えない!)必死に洗うあなたに「生まれ
てほしかった?」だれも望まないだれにも望
まれない未分化のせいめいの美しい瞳を、わ
たしは舐めとって(赤く錆びついて、)酸性
雨に打たれている。「ねえ、」「生まれなか
った、」わたしは(あなたは、)どこから生
まれてきたのだろう。なにもかもがやさしい
真夜中の底辺で、金色に光る砂を浚った。

 桜の芽吹く音を背に、山の中
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