道で出逢う/木原東子
した瞬間の若者の横顔を
いつも想っておりました
肩の形を恋うておりました
きゅっと道にプレーキの音
恋う人がそこに立っておりました
少女は夢から覚めて
醒めても若者がみえるので
日差し眩しく見上げました
とびっきりの白い笑顔がありました
白い熱い道で何かに包まれておりました
誰もいませんでした
黙って視線を捧げ合っておりました
4
長の息子が亡くなったと
不吉の知らせ
目白警察署から枯れ葉のように
横断歩道を押されて渡る
その先に幻の長身がやってくる
はずもなく
往来の中にリュックを背負う影
まっすぐな眸の若人
電車に乗っていない人
[次のページ]
戻る 編 削 Point(20)