靴下/はるな
 
物事を見るにはそれ用の訓練が必要なのです。そして訓練をすれば、だれでも、そうです、誰でもそれを見ることができるでしょう。ええ。

少女だった―脚も腕も細くて―白い靴下を履かされていた。いつも赤黒くよごれた。かなしかった。

ときどき思い出すあの部屋、あの部屋にいたらわたしも桃色になってしまったのだろうと思い出す。憧憬に似た穏やかな気持ち。メロンソーダみたいな。だんだんと親指のつけ根が曲がってくる、そこから柔らかな緑が芽吹き、あれよと言う間もなく濃く隆起し、血を吸い上げ、巡らせ、また葉を茂らす そして 心地よい涼しさに目を細めると わたしは親指のつけ根から わたしを見ているのだ 不思議そうに
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