埋めるために/竜門勇気
ぼす 母が石を掻きだす
穴は深くなる
小さな体が納まるように 思い出が遠くへいかなくなるぐらいの虚しい深さに
かつて彼の寝床だった場所に かつて彼のものだった毛布でくるんだ彼が眠っている
かつて彼が好きだった出窓に いつもそこから外を見ていた 彼を出窓に
部屋は暖かすぎるので
氷を入れた袋を抱かせた
目やにの臭いと口臭がした
それに混じった確かな死臭を嗅いだ
寝ぼけてこちらを見るような目をしているその顔が
遠くへいかない様に長い間冷たくなるばかりの腹をまた撫でていた
とても飽きそうになかった 永遠にこうしていたかった
優しい目で 彼は遠くを見ている かつて彼が飽きず
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)