埋めるために/竜門勇気
 
だったとか)
そんなことばかりでそれが何年のことだかはなかなか思い出せなかった
あ、と思いたち水呑み皿の受け皿を見ると
ショコラ・H7年・7月と書いてある
妹が書いたものだ
命名おじいちゃん、とも書いてある 
もうすぐ17歳だったんだね、長生きしてくれたね、と母に話しかけると
そうだね長生きだねと笑っていた

妹が仕事の昼休みに一度帰るという
そして僕は穴を掘った
鍬とスコップで石だらけの庭を掘った
コートのフードを小さな雨つぶが音を立てて打つ
頭から雨粒が透けて穴に落ちる
いくどか鍬を石だらけの泥に叩きつけては
母が泥と石を掻きだす
雨粒が透ける 鍬が火花をこぼす
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