すこし話しがしたいんだ/ただのみきや
ランだ
二人は何度か近づいた
一度は衝突しかけたが
最終的には遠く離れ離れになってしまった
あなたは遠い旅路の果て
まだ見ることも知ることもない人生の目的地へ
相手はと言うと ぐるりと世界を回っては
多くの者が「わたしのもの」と手を伸ばしたが
結局はもといた場所へと落ち着いたのだ
あなたは一途な人だが
人は金剛石にはなれない
心が夜露に震える夜を過して
曙の光と共に羽ばたいたとしても
過去を裏切ることではない
一本の線は時に曲線を描き繋がって行く
熾火が灰に変わるまでは
幾度胸をかきむしろうと
いくつの器を叩き割ろうと
構いはしないから
人の慰めは気休
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)