去年の駄文1 携帯電話と袋小路/佐々宝砂
 
わけではない。わずかでもかまわないから、報酬がほしいのだ。

でも、工場で携帯電話を組み立てながら、私はどんどんバカになってゆく。どうでもいいような私の雑学なんか、工場では無用だ。詩はなおさらに無用だ。大学の講義で覚えたことも、考えたことも、全く無用なまま、どんどん腐ってゆく。要らないから腐る。でも、本当は、私は、無用に思えるもの≒芸術が好きなのだ。携帯電話の組立よりも、コンビニ業務よりも。それをはっきり自覚できている場合、私は今のように極鬱にはならない。今はだめだ。なぜなら、今の私に、芸術と知識は、無用だからだ。私は機械のように動く。せっせとビスを締め、保護シートを貼り、カメラにゴムのキャッ
[次のページ]
戻る   Point(8)