港/草野春心
赤茶けた数艘の漁船が
死んだように泊まっている
コンクリートでできた堅い半島は
港と呼ばれる寂しい場所だ
秋の空の蒼い果てで
透明な名も無き巨人が
白雲の煙草を喫っているのを
午後の海は映しもせずに
暗く妖しく波打つだけ
路傍に蹲(うずくま)る子供によく似た
頑是ない姿勢で動きを止めた
旅立つ船の無い港
手を振る者の嘆きは響かず
迎える笑みのはためきも
今は虚しい風に流れて
それなのに此処に立っていると
塩辛く湿った吐息が
ふっと頬を温めるから
誰かと差し向いに
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