ぬるい風/壮佑
 
いる。私はまたも喃語を喋り
かけたが、もう少しのところで舌が裏返ってしまった
                   
 ペットボトルから飛び散ったぬるい風は、白い泡の群れに
なって電車の窓から飛び出し、海中を遠ざかって行った。と
思ったらすぐに戻ってきて、私から素早く喃語を奪い取ると、
海面を目指し一目散に上昇してゆく。私はあわてて車両から
潜望鏡を出して覗いてみたが、たちまち魚の群れが潜望鏡に
齧り付いて、まったく用をなさなくなった。
                   
 斜め前に座っていた女子高生が、私の様子を眺めてケタケ
タ笑っている。私は何事もなかったような顔をし
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