ぬるい風/壮佑
 
をして潜望鏡を
覗いていたが、だんだんきまりが悪くなってきた。海面に達
して空気中に解放された私の喃語が、多島海に響き渡ってい
るのがここに居ても聴こえてくる。すべての風が喃語を喋り
出すのも時間の問題だ。
                    
 女子高生はケタケタ笑い続けている。電車が陸に戻ったら、
彼女に事のいきさつを説明したいものだ。私は喃語を失った
のだから、普通の言葉で喋ればいいだろう。

                                                                                


                                        
(注)「喃語(ナンゴ)」=嬰児のまだ言葉にならない段階に発する声。
      (以前詩誌に投稿した作品を書き直したものです)
       





                                   
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