かなしみ/深水遊脚
 
また締め出されることになる
信じて秘密を共有しようとした人は
裏切りには敏感だよ

信じることをやめて
全ての部屋に鍵をかけることもある
土足であがり込む無神経さに驚いて
秘密を明かす人を間違えて
そのたびに悔しい思いを重ねて
簡単には開かない鍵が出来上がる
「見せてもらって当然」はおろか
「見たい」も許してもらえない
そんな時はきっと
沈黙を聴くほかに手はない
同じかなしみを共有していなければ
鍵は開かない
だから心を静かにして
言葉を言葉として受け取り
その奥にあるものを感じ取る
正しい答えは出ないかもしれない
部屋の主にも分からない時だってある
ただ
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