君/salco
 
に君がようやく勝るのは
ゴミと積まれた語彙ぐらいのもの
経験に勝る無垢があり
論理に勝る衝動があり
君の詩才も三歳児のインスピレーションには敵わない

家庭を持つのは良い事だ
家族といるのは居心地が良い
けれど時々君はやはり
九十センチ平方の孤島に立っている自分を感じる
イビキやオナラを聞かせても
生涯の伴侶にすら
決して見せない地所が君にはある
それは過去の沙汰でも昨夜の浮気相手の声でもなく
極めて陰険悪質な性格の一面でも
腹に隠した性的嗜好でもない
心の片隅で呟き続ける孤独の言葉を誰にも聞かせないのには
ちゃんとした訳がある
それは決して言葉にならないし

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