ブルーアウト/月見里司
て、電車に乗り込む。
工場ばかり並んでいる実家の周りで、
喪服と塀の鯨幕はすぐに見つかった。
軽く会釈をして受付に名を書き込む。
年の離れた従妹が目を腫らしている。
小さい頃に数度会ったきりだったが、
雰囲気が近い、とよく言われていた。
お仕着せの経があげられ焼香が進む。
立派な戒名が付き、滞りなく旅立つ。
白い服と、六文銭。棺に飾られた花。
しかし、恐らく忘れている事がある。
わるい物が喉に引っかかったようで、
落ち着かない。不意に人魚が見える。
(ここは静か、)
夢の中では常に遠かった歌声が、今
は段々と近づいてくる、とむらいの
火が焼香の煙と重なる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)