アンダートーン/ホロウ・シカエルボク
 
かもしれない
尻を光らせていた蛍が不意に
ちからを失くしてかさぶたから床へと落ちる
水溜りの中でそいつは
握り潰されたようになって死体だった


たった独りの部屋でさよならと言い続けた
それは徹底的であって
尚且つどこにも着地することが無かった
蛍の死体と傷の痛みと
また滲みだした血液
天井からの水滴をなにかと勘違いする
凍えているのに震えることはなかった
本当の喪失は
ことさらになにかを奪ったりしない
目を見開いているだけの誰かが
なにを見つめているのかなんて想像すらつきやしないだろう


心臓がパンピングしている、たったひとつの言葉で踊り続ける舞踏みたい
[次のページ]
戻る   Point(2)